高温超伝導体の構造に関しては、これまで非常に多くの報告がなされている。回折法に限定しても、中性子回折あるいはX線回折データによりリートヴェルト法、最小自乗法、フーリエ法により数多くの解析例が知られている。それにより、高温超伝導体の基本構造は既に確立している。しかしながら、これらの方法では結合状態など基本構造以上の詳細な構造情報を得ることが非常に難しい。最近、新たな解析方法として、マキシマムエントロピー法が提唱されている。この方法によれば、X線回折データからは結合状態を含めた電子密度分布が、中性子回析データからは、格子振動の平均像としての核密度分布が得られる。単純化した表現をするならば、X線からは電子系、中性子からはフォノン系の情報が平均像としてではあるが、得られることになる。この方法をYBCOに適用し、296Kおよび15Kでの核密度分布を求めた。核密度分布をさらに解析し、一体近似の範囲内で、非調和性を含むポテンシャルを求めることが可能である。現在、この様な解析を行っているが、核密度分布から理解できる定性的な結果を述べると、Ba、O_2、O_3に対してc軸方向に非対称な非調和性が認められる。また、O_4は最も大きな熱振動を示し、Cu-O面内に著しい異方性が認められる。電子密度分布に関しては、放射光により高分解なX線データが収集されており、解析を始めた段階である。
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