研究概要 |
本研究では層状構造を持つ酸化物超伝導体を溶液紡糸法により細い繊維状に合成し、繊維の形状的内部構造的な特徴を有効に活かし、配向性に優れた高いJcを持つ良質な線材を作成する事を目的とする。本年度は直径110μmの前駆体繊維の部分溶融凝固処理を検討した。その結果、部分溶融温度、凝固時の冷却速度及び123相の成長のための冷却速度を制御する事により配向性に優れた77K,OTでJc=10^4A/cm^2以上の高いJcを示す直径20μm以上の繊維を作成出来た。しかしその最適条件の範囲は繊維の直径が細いほど狭くなった。種結晶を用いて繊維中のab面内での結晶配向をさせるため、多結晶及び単結晶MgO(100)とSrTiO_2(100)単結晶の基板を用いてAr中で熱処理しその後酵素処理した。明白な結晶の配向は認められなかったがMgO単結晶上で熱処理した繊維は中実な繊維となり他の基板では中空繊維となり組織に差が見られた。また前駆体繊維中の有機物を揮発させる熱処理条件にも組織が大きく依存していた。溶液紡糸法を利用して高圧合成で見いだされた無限層超伝導体の常圧合成を検討した。均一な溶液状態から(Ca_<1-x>Sr_x)CuO_2,(Ca_<1-x>Sr_x)_<0.9>CuO_<2-y>前駆体繊維を作成し、熱処理を検討して0.05≦X≦0.3の範囲で無限層の繊維を得たが繊維の超伝導性は認められなかった。最近Tc=130Kを越すHg系超伝導体が発見されたので、その合成と繊維化を行った。Tc=133Kで抵抗の落ちが始まり105Kで零抵抗となるHg系超伝導体を作成することができた。
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