本年度は結晶サイズ、Si/Ti比の異なるTS-1を合成し、酸化反応特性を支配する因子を明らかにするとともに、MFI構造以外のチタノシリケートならびにチタン以外の遷移金属を骨格に含んだゼオライトの合成とそれらを用いた酸化反応について検討した。 MEL構造のTS-2もTS-1と同様にアルカン、アルケン、芳香族の酸化活性を示した。合成条件を変えて合成したTS-2の結晶径、Si/Ti比の異なるサンプルによるC_6炭化水素の酸化反応結果を見ると、アルカン、芳香族の水酸化とアルケンのエポキシ化の触媒サンプルに対する依存性は相反する傾向を示した。このことからTS-2において水酸化とエポキシ化のチタン活性サイトの構造が異なることが示唆された。TS-1でも同様な傾向が観察された。ヘキサンの水酸化の活性点はゼオライト骨格に組み込まれたチタンであるが、ヘキセンのエポキシ化には骨格に含まれていないチタンも活性を示すものと推定している。物質移動のパラメータt_<03>と酸化速度のヘキサン/シクロヘキサン比のゼオライトサンプルに対する依存性は酷似しており、このことからも、アルカン酸化の活性点はゼオライト内部にあること、さらに、形状選択性の発現には拡散が大きな役割を果たしていることが示された。また、バナジウムを骨格に含んだMEL構造のバナドシリケートVS-2を合成し、ヘキサンの酸化に用いたところ、末端メチルの酸化が起こり位置選択性は3-位>1-位>2-位の順となった。1-オールとアルデヒドの選択率の合計は30%を越えた。今後、バナドシリケートを用いてメタンの酸化を試みる予定である。
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