研究概要 |
前年度からひきつづき(1S,2S,4S,5S)-2,5-ジイソプロピル-1,3-ジインデニルシクロヘキサンを配位子として有する光学活性(Ind)_2^*TiCl_2(1)(Ind:上記η^5-インデニル基、*不斉要素)とジエンからi-PrMgBr存在下発生させた(Ind)_2^*(η^3-アリル)チタン反応種による不斉炭酸ガス固定につき総合的に検討した。すなわち1と2-ノニルブタジエンから上記反応を経てS-2-メチル-3-ノニル-3-ブテン酸を96〜97%eeで得たのと同様に、ミルセンから対応するカルボン酸をオレフィン部位を損なうことなく94%ee、収率67%で得た。しかし、シクロペンタジエンでは対応するカルボン酸が得られなかった。これはシクロペンタジエンからカルボン酸を与えるCp_2TiCl_2の場合と対照的である。立体的に嵩高いインデニル基の影響でシクロペンタジエンのチタン錯体への取り込みが進行しないものと考えられる。チタン錯体1の絶体構造と生成したカルボン酸のそれを比較すると、反応は(Ind)_2^*Ti部位の不斉ポケットに基質(ジエンとCO_2)が入り込む経路で進行しているとしてうまく説明できた。本反応は炭酸ガスの不斉固定のみならず、CO_2と等電子的なアルデヒドにも拡張できCO_2と同様の高い位置選択性でホモアリルアルコールが得られた(収率61%〜quant)。反応はアキラルなCp_2(η^3-アリル)Ti反応種の場合と同様にアルデヒドによらずthreo選択的(threo/erythro=71:29〜95:5)で、この主生成物で炭酸ガス固定と同程度の高い不斉誘起(94〜97%ee)が実現された。また、不斉付加のセンスもthreo体・erythro体ともに炭酸ガスの場合と同様である。ただし、erythro体でのeeが極端に低く(13〜46%ee)、生体物を与える立体化学規制が、ジエンから(Ind)_2^*(η^3-アリル)チタン錯体生成の際のπ-アリル面の選択で専ら決まるのではなく、アルデヒドをとり込んだ反応中間体のπ-アリル面の反転を含む再構築が無視できないことがわかった。
|