可視光による水の全分解を行なう光触媒として開発を行なってきた層状化合物のうち、SiO_2により層間架橋をしたK_<0.8>Fe_<0.8>Ti_<1.2>O_4へのN_2の吸着について、透過型赤外分光法を用いて調べた。その結果、2種類の吸着N_2種が存在することがわかった。 1つは、N〓Nの伸縮振動による吸収バンドを2330cm^<-1>に有し、これは気相における振動周波数(2331cm^<-1>ラマン)とほぼ同じ値であった。この吸着種は気相N_2との平衡下でごく低温(160K以下)でのみ存在し、吸着熱は約5KJ/molであった。 もう一方の吸着N_2は、2350cm^<-1>と、気相での振動よりも高波数側にシフトした吸収バンドを持ち、非常に強く吸着していることがわかった。2350cm^<-1>の吸着N_2は、気相N_2下で85Kより徐々に昇電すると次第に強度を増していった。 即ち活性化吸着であることを示している。また、一担生成した吸着種について、排気下での熱的安定性を調べたところ240Kまで安定に存在した。気相との平衡吸着ではなく不可逆的に存在する吸着N_2は、これまでに報告がない。この吸着種が他の酸化物、あるいはゼオライトなどの多孔質化合物などに観られなく、層間架橋したK_<0.8>Fe_<0.8>Ti_<1.2>O_4に特有であることより、層間の特徴的なサイトと強い相互作用をしたものであると考えられる。
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