研究概要 |
1.ギ酸脱水素酵素およびメタノール脱水素酵素を電極触媒に用いた二酸化炭素の電解還元反応 メチルビオローゲン(MV^<2+>)ならびにピロロキノリンキノン(PQQ)を電子メディエータに用いることによって,ギ酸脱水素酵素(FDH)による二酸化炭素のギ酸への電解還元およびメタノール脱水素酵素(MDH)によるギ酸の電解還元反応を行えることを見出した。前者の反応は,電解セルを遮光することにより連続的に進行し,90%以上の高い電流効率が得られた。いっぽうMDHを用いたギ酸の電解還元場合,MV^<2+>を用いるとホルムアルデヒドが主生成物となり,それが蓄積するとメタノールが生成したのに対し,PQQを用いると,メタノールのみが選択的に生成した。その反応機構をPQQの電極への吸着挙動から明らかにした。以上の知見を基にして,FDHとMDHの両酵素および電子メディエータの存在する電解液を用いることにより,二酸化炭素のメタノールへの電解還元反応を行うことに成功した。PQQを用いた場合には生成物はメタノールのみであり,89%という極めて高い電流効率が得られた。 2.ZnS半導体超微粒子とMDHを用いた二酸化炭素のメタノールへの光還元反応 二酸化炭素を飽和したZnS超微粒子コロイドに,MDH,PQQ,および正孔捕捉剤として2-プロパノールを溶解し,高圧水銀-ランプ光により照射することによって,ZnS超微粒子による二酸化炭素のギ酸への還元と,MDHによるギ酸からメタノールへの還元反応が連続的に進行することによる,二酸化炭素のメタノールへの光還元反応を行うことに成功した。この場合,ZnS超微粒子内に生成する励起電子は,二酸化炭素の還元とPQQの還元に競争的に用いられるため,PQQの濃度が反応に大きく影響を及ぼす。二酸化炭素からメタノールへの変換の量子効率は5.9%であり,これまでに報告されている半導体粒子を用いた二酸化炭素のメタノールへの光還元反応の中で最も高いものであった。
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