研究概要 |
まずエネルギー的に高い活性な酸素原子の前駆体としてN_2Oを選び,その光解離反応についての知見を得ると共に,これによって生成される活性酸素の引起こす金属表面上での反応について研究を行った。 N_2Oを82Kで単分子層吸着させたPt(111)表面に紫外光を照射すると,N_2Oは解離し酸素原子と窒素分子を生成する。窒素分子は表面との相互作用が小さいため表面から脱離する。励起光として193nm(6.4eV)の紫外光を用い,脱離する窒素分子の並進エネルギー分布を飛行時間分析から求めた結果,平均の並進エネルギーとして0.75と0.26eVという高いエネルギーを有した2つの速度成分があることがわかった。このようなN_2の高い並進エネルギーを考慮すると,解離直後に酸素原子も大きな余剰エネルギーを持つと考えられ,これを表面に完全に散逸させる前に他の吸着種と反応を起こす可能性がある。そこで,この可能性を探る目的で化学吸着した酸素原子とN_2Oとの共吸着系に紫外光(193nm)を照射した。その結果,N_2Oの光解離で生じた酸素原子の一部があらかじめ強く化学吸着している酸素原子を表面上から引き抜き酸素分子として脱離することを見出した。この酸素原子の結合反応には1eV程度の活性化障壁が存在することが知られており,光解離によって生成された酸素原子はこれを乗り越えるのに十分なエネルギーを有していることがわかる。このようなエネルギー的に高い酸素原子とメタン等との反応を引起こすためには、メタンを金属表面に効率よく吸着させるために40K以下の表面温度を達成しなければならない。これに関してはこれまで使用してきた液体窒素による冷却を行っていたサンプルホールダーを改良し、He小型冷凍機を用いたタライオスタットを試作し、その見通しを得つつある。
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