光化学反応初期過程の一つである項間交差における外部磁場効果の機構解明の為に、4-および5-メチルピリミジン(4-、5-MP)およびアセトアルデヒドの蛍光特性とその磁場効果の実験を行ない、項間交差の磁場効果に対してメチル基の内部回転がどのように関与するか、また分子内解離反応が蛍光の磁場効果にどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、内部回転準位の中ではいづれのMPもOa_1よりは1e励起の方が磁場消光の効率がはるかによいということが初めてわかった。また同じMPでも4-MPの方が5-MPに比較して消光効率がはるかに大きい。この理由として、内部回転の障壁が4-MPの方がはるかに高いため、内部回転モードと分子内振動モード間のより強い相互作用が三重項状態において存在するためであると考えられる。またアセトアルデヒドの蛍光特性も、顕著な磁場効果(磁場消光および減衰曲線の単一指数関数から二つの指数関数の和への変化)を受けることがわかった。しかも、観測された磁場効果の効率は三重項状態を経由して起こる解離反応のしきい値近傍で急激に変化し、反応と磁場効果の効率が密接に関係することが明かとなった。 これら気相分子に関する研究と並行してLB単分子膜中に取り込まれた分子の発光特性の磁場効果の実験を進めている。フェナントレンあるいはピレンそしてジメチルアニリンなどの電子受容体と供与体が単分子膜を挟んでサンドイッチ型に配置された分子系を構築し、蛍光の磁場効果を電場の有る、無しで調べる実験を進行中である。
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