低分子ゲル化剤として12-ヒドキシステアリン酸(12HOA)を取り上げ、12HOAが形成するゲル構造及びゲル中で進行するラジカル重合に及ぶ磁場効果について検討を行った。この化合物は分子間での水素結合によって繊維状の会合体を生じ、これが形成する三次元構造の隙間に溶媒をトラップすることによってゲルを形成する。 このゲル中では生長ラジカル間の停止反応が抑制されることにより長寿命化する。この安定化した生長ラジカルを開始種として重合を行ったところ、低分子化合物であるモノマーのみが系内を拡散することで新たなラジカルの発生がないにもかかわらず重合は進行した。40℃で行った重合で、4000G磁場存在下と不在下で重合速度、生成ポリマーの分子量に差が認められた。 12HOAは有機溶媒に加熱溶解し、徐冷することで透明なゲルを形成する。12HOA自体は大きな旋光度は持たないが、高次構造を形成すると大きな旋光度を示すため、ゲル構造に関する情報が旋光度あるいはCDスペクトルから得られる。ゲル構造に及ぼす磁場効果について検討するため、磁場存在下でこれらの測定を行ったところ、磁場の存在によってスペクトルに異方性あるいは強度の変化が現れたことから12HOAの形成するゲル構造が磁場によって影響を受け、その構造に変化を生じることが明らかになった。すなわち、12HOAの形成る環境は磁場によって影響をうけやすく、その中で進行する反応に対して効果が期待できる場であることがわかった。
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