(1)ネットワーク構造を格子上の0または1の変数で表したモデルを分析した。結合マップ法によってこの模型の動的揺らぎが調べられ、分子動力学計算で見いだされたのと同様な、エネルギーの1/f揺らぎが確認された。この模型におけるネットワークの空間構造の動的揺らぎとエネルギー揺らぎの相関が分析され、(a)ネットワークの組み替えが盛んに起こる領域は局在していて、時間とともにその領域は変化、移動する。(b)ネットワーク構造の空間的変化の規模は階層的な分布をしており、小規模で頻繁な変化と大規模でまれな変化が共存している。(c)氷に近い秩序が発達しかけたり、消えたりする揺らぎがネットワークの大規模な構造変化とエネルギーの長時間変化の原因になっている。などの新しい知見が得られた。 (2)水分子間のネットワークを複素数の場の変数で表す手法がさらに発展させられ、(a)過冷却水の熱力学的異常の起源について新しい機構が提案された。分子密度の相関関数や、結合の分布の相関関数に異常がない場合でも、この模型の基本的物理量である場の変数の相関関数には異常が発生しうること、それが熱力学量の異常を説明しうること、が示された。(b)複素数の場に存在しうるトポロジカルな励起の性格が分析され、水和構造や溶質間相互作用との関連が示された。 (3)水溶液反応で、とくに興味があるのは生体内反応である。x線などの方法で解明された蛋白の立体構造から経験的ポテンシャルを構築し、蛋白質の立体構造に関する分子動力学計算を行った。ほどけたランダム鎖を初期条件として、カルシウム結合蛋白などについて3次構造のかなり良い再現が可能である。とくに、疎水相互作用の重要性が明確にされ、ポテンシャルの改良が進んでいる。
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