研究概要 |
1.誘導共有結合理論に基づく水素分子クラスターの電子状態の計算 水素様原子集団の強い電子相関を簡単で比較的正しく計算する方法を,強束縛モデルによる誘導共有結合の考え方に類似な方法によって定式化し,スレーター型軌道関数を用い,3中心・4中心積分を解析的に近似する方法を導入し,H_3およびH_4系の計算を行った. H_3系に対する結果は,従来の大規模計算の結果と比較的よい一致をみ,H_4系について,種々の配置に対して基底状態と低励起状態を計算し,多体電子レベルの交差の様相を詳しく調べた.その結果,三角錐型の配置では,頂点の原子位置が底面から離れているときは一重項が安定だが,頂点原子が底面近くに来ると三重項が安定になることなどがわかった. 2.より簡単化のためのモデルの構築 上で得られた結果は,電子系の自由度をHeisenbergスピンに置き換えスピン1/2の電子が局在した原子の間にYukawa型の遮蔽されたクーロン力の働くモデルでよく再現できる.この簡単なハミルトニアンでパラメータを適当に選ぶと,水素分子の一重項と三重項のエネルギーを半定量的に再現し,H_3系の円錐交差点の周囲での幾何学的な位相を正しく再現する.現在,このハミルトニアンによるレベル交差の様相が,より詳細なCI計算による定性的に一致することを確認中である. 3.これらに,関連する問題として,水の中のプロトンスピンの位相緩和に対する雑音特性の効果,イオンの溶媒和エネルギーに対する溶質との電荷移行効果について考察した.また,H_2+Hの組み替え散乱に類似の問題として,一次元量子ドットでの伝導(電荷移行)に対するクーロン相互作用の効果の計算の定式化を行った.
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