平成5年度は先に行ったパイロライト-水系の結果を考察し、それを単純化したMg_2SiO_4-MgSiO_3-H_2O系とパイロープ(Mg_3Al_2Si_3O_<12>)-H_2Oの高圧下での溶融関係を調べた。前者では、5GPa以上で液の組成が急激に変化し、MgOに富む超塩基性の液(マグマ)が生成されることがあきらかになった。また圧力領域を15GPa以上にまで広げた実験では液と共存する相にまだ結晶学的に未同定な相を発見した。この相はEPMAやX線回折や顕微赤外分析からMg-Si比が1.8ではあるが、変型スピネルに似た構造を持ち、かつ3wt%程度の水が含まれていることが判明した。これは地球深部400km以下でも安定な含水相が存在しうることを示し、こののような深部にも水のリザーバーが存在する可能性を示唆した。また後者パイロープはAlの坦体としてマントルに含まれていると推測される鉱物であり、含水相でのAlの効果を見る目的で行った実験である。ここでも水を含むことにより7.7GPaでも水を含まない場合に比べ、650℃以上融点が降下すること、および一致融解することが解った。今後は圧力範囲をより高圧側まで伸ばした実験を行うこと、およびCaを含んだ相の溶融関係を明かにし、熱力学的な解析を行って水を含んだ多成分マグマの生成環境を解明する必要がある。 実験に先立ち、グラファイトがヒーターとして使用できなくなる10GPa以上の領域で金属Taヒーターを用いるため加熱システムの改良とデータ収集システムの開発を行った。
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