研究概要 |
高次フラーレンC86、C88、C90、C92、C94を単離し、その分子構造を決定した。これまでは、一次元のNMRのデータのみから一義的に構造決定が不可能であったこれらの高次フラーレンにおいても、炭素原子のネットワーク構造と化学シフトの経験的に求められる相関を考慮することにより、構造決定できることを明らかにした(阿知波)。高次フラーレンC78,C86,C90およびC96の紫外電子分光測定を行った。この結果,C78分子の対称性はC2v'またC96分子はC1対称である可能性が高いことを示唆した。C86とC90については現在検討中である。また,金属フラーレンGdC82とLa2C82についての測定も行ったところ、金属フラーレンでは金属が含まれる個数によって性質が大きく異なっている可能性を発見した(日野)。アーク放電法を用いたフラーレン生成装置において、アーク放電中の容器内温度分布を熱電対によって測定し、緩衝ガス圧力や流れを変えた場合の温度分布の変化とフラーレンの収率とを比較検討した。また、分子動力学法を用いたシミュレーションにより一定温度に保った孤立炭素原子が凝縮過程で不完全ながらフラーレンと近い構造を形成する過程を実現し、その反応機構について検討した(丸山)。カーボンナノチューブをベンゼン等の炭化水素の熱分解プロセスで調整した。熱分解ナノチューブのTEM観察により、様々な構造体を見出し、その構造モデルを示した。また、かかるナノチューブは、気相成長炭素繊維(VGCF)の成長初期過程に形成されるため、そのVGCFとの構造相関性について検討した(遠藤)。
|