研究概要 |
年度に引き続き原子数100以上の高次フラーレンの単離精製、キャラクタリゼーションを試みた。単離したC_<116>の電子吸収スペクトルはいくつかの構造を有しており、かなり少数の異性体からなっていることを示唆している。さらにC_<116>の単分子膜のSTM観測を行い、外形的にC_<60>のほぼ2倍、たまご形の構造を有していることが明らかになった(阿知波)。高次フラーレン(C_<89>,C_<90>,C_<110>)、金属フラーレン(La_2C_<80>,GdC_<82>)、Cs_1C_<60>の光電子分光法による電子状態の研究を行った。高次フラーレンのフェルミレベルから5eV以下の結合エネルギーの大きいσ電子によると考えられる結合状態は、いずれのフラーレンでも類似であることを見出した。一方5eVより浅い準位では、スペクトルは個々のフラーレンに特徴的であることを明らかにした。金属フラーレンのGdC_<82>では金属からケージに3個の電子が移動していることを明らかにした。Cs_1C_<60>の室温相は金属的な電子状態を持つことを明らかにした(日野)。炭化水素の気相熱分解法によりカーボンナノチューブを生成し、TEM及びFE-SEMによりその構造解析を行った。またナノチューブのTEM格子像に画像処理を施すことにより、100面が002面に対して本来の位置より傾いたグライド構造が三次元的なグラフアイト構造と巧みに共存していることを見出した。これによって今まで困難であったナノチューブの乱層構造的な欠陥を明確にでき、乱れた乱層構造からナノチューブの電子的性状も推定できた(遠藤)。レフレクトロン型TOF質量分析計を用いてレーザー蒸発超音速膨張法によるフラーレン生成の条件に関しての検討を行った。さらに、分子動力学法を用いたシミュレーションにより、一定温度に保った条件下での凝縮過程で孤立炭素原子から不完全ながらフラーレン構造を形成する過程を実現し、制御温度の効果について検討した(丸山)。
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