当初計画中の主要設備を認めて頂けなかったこと、ならびに、予算実施許可が遅れたことにより、本年度の実施計画を変更せざるを得なかった。すなはち、現有のアーク反応炉を用いて、少量ながらも新種のフラーレン化合物の合成、つまり、金属またはその炭化物微結晶を内包するスーパーフラーレンの合成と電子顕微鏡観察によるそれらの生成成長機構を明らかにすることに専念した。その結果、(1)超伝導体炭化タンタル微結晶内包ウィスカー状フラーレンの合成、11種類のランタノイド炭化物単結晶内包スーパーフラーレンの合成遷移金属ならびにその炭化物結晶内包スーパーフラーレンの合成に成功した、(2)微結晶サイズ分布を電子顕微鏡観察から求め統計的粒子成長モデルと比較し、その有効性を明らかにした、このことは内包微結晶の成長のみならずフラーレン生成成長に関して理論的指針が得られたことを意味する、(3)これら内包微結晶のうち数種について磁気的性質をあきらかにした。これらの成果は、(1)と(2)について国際学会(平成5年5月ハワイ、9月東京、共に印刷中)ならびに日本物理学会(平成5年10月、岡山)で発表した。また、(1)の詳細ならびに(3)については米国応用物理学会誌に投稿中である。更に、これら一連の成果について平成6年5月米国電気化学会での招待講演を依頼されている。
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