研究概要 |
触媒的な不斉合成では触媒量の不斉源から無限個の光学活性化合物が合成できるので,高い立体選択性が達成できれば,実際的な価値もきわめて大きい.中でも遷移金属錯体触媒反応では炭素-炭素結合生成反応などに代表される多様な反応が可能であり,また触媒効率の点などからも遷移金属系触媒反応は触媒的な不斉合成に最も適したシステムである.平成5〜7年の3年間かけてこのような遷移金属錯体触媒を用いる高選択的不斉合成を目指して,新しい触媒反応の開発と不斉触媒の設計・合成を行ってきた.得られた結果は本報告書にまとめられている.特に優れた成果としては:1)新しい光学活性単座ホスフィン配位子MOPを用いたパラジウム触媒によるオレフィンの不斉ヒドロシリル化やアリルエステル類の不斉ギ酸還元など従来にない高い立体選択性を実現した.2)新規光学活性サレン配位子の設計に成功し,種々のオレフィンの高エナンチオ選択的エポキシ化反応を達成した.3)希土類アルコキシドを不斉触媒とする全く新しい不斉触媒反応であるニトロアルドール反応や不斉マイケル付加反応を見いだし,これを有用有機化合物の実用的な不斉合成に発展させた.
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