一方向巻きらせんポリマー、天然高分子、不斉分子を担持した高分子、等の多くの高分子化合物が光学分割剤として利用されているが、不斉触媒への応用は限られている。最近いくつかの合成ポリマーの一方向巻きらせんが単離されており、優れた光学分割能を示すことから、らせんポリマーが不斉反応の場としても重要な役割を果たすことが考えられる。そこで本研究では、ポリペプチドの中でらせん構造をとりやすいと考えられるα-アミノイソ酪酸の重合を試みた。α-アミノイソ酪酸のN-カルボン酸無水物を種々の光学活性アミンを開始剤として重合した結果、高い旋光度を有するポリマーを合成できた。α-アミノイソ酪酸自身には不斉炭素が無く、旋光性は主にらせん構造によるものと考えられる。われわれはすでに高分子担持型の光学活性ポリアミノ酸がカルコン類の不斉エポキシ化反応で100%eeに近い選択性を示すことを見いだしているが、ポリ(α-アミノイソ酪酸)では10%ee以下であった。 次に、高分子によって構築される不斉場を利用した不斉反応において影響を与える高分子効果を評価するためには高分子担持型の不斉触媒が有効であると考えられるので、その合成を検討した。高分子担体としては架橋ポリスチレンを用いて、光学活性アミノアルコール、ジオール、N-スルホニルアミノ酸の担持法を種々検討した。これらを担持したポリマーは、ボランまたはハロゲノボランとの反応により、高分子担持ルイス酸触媒として不斉Diels-Alder反応に用いることができた。架橋度、触媒の担持率、が不斉選択性に大きく影響を与えることがわかった。また条件によっては低分子触媒を上回る選択性を与えることも明かにした。架橋高分子触媒であることから、触媒の回収、再利用が容易であり、反応のフローシステム化を現在検討中である。
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