研究概要 |
有機イオウ活性種を合目的に発生させるために、種々のスルフィドを電極酸化していくつかの合成反応への利用を広汎に試みた。とりわけ、ベンジルスルフィドの特異性に着目して、分子内に官能基をもつスルフィドを各種合成して電極酸化を実施した。そこで生じるスルフィド活性種の反応性をこれまで以上に制御できることを実証した。本年度における研究成果は以下の通りである。 1)β-ヒドロキシスルフィドのピナコール転位-分子内にアルコールをもつスルフィドの電極酸化は転位反応が可能で、本年度は特にこれを5員環から6員環への環拡大反応として一般化を試みた。方法としては、間接的な電極酸化がよいとわかった。未解決の系も残ったが、多数の成功例を見い出せた。(年度末、日本化学会で発表)なお、年度後半に購入できた電気化学測定装置は、これらの反応の初期過程の解明に大いに役立った。 2)γ-ラクトンの新型合成法-分子内にカルボキシル基をもつスルフィドについてはγ-ラクトン類のよい合成法になることを、前年度にひきつづき、さらに拡張できた。殊に、多アルキル置換体に関しては、本法ではじめて解決できた(1993,秋 日本化学会,本年度末,電気化学会で発表)。 3)関連する応用反応の探索-さらに工夫された官能基をもつスルフィドで、ヒドロフラン環の合成、テトラリン環の形成とその法則性や環状イミデートの合成などができる例を見い出した。あわせて、それらの反応活性種の反応性が明らかとなった。これらの成果は、さらに新たな展開ができるものと期待している。
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