研究概要 |
ジエン鉄トリカルボニル錯体の1、2-不斉誘起能についての検討を行った結果、E-ジエノン錯体(1)に対する有機金属試薬(アルミニウム試薬、銅試薬、有機リチウム)の攻撃は一方的にSi面より起こり、いずれの場合も2が単一化合物として得られる。しかし、Z錯体(3)との反応では、リチウム試薬と銅試薬を用いた場合にはZ-付加体(4)が、アルミニウム試薬やメチルグリニャール試薬を用いた場合には2がそれぞれやはりほぼ100%d.e.で得られる。一方、イミン錯体(5)との反応では、有機リチウムやグリニャール試薬は良い結果を与えず、銅試薬および有機セリウム試薬を用いることにより収率良く付加体(6、7)が得られる。しかも有機セリウム試薬を用いると、ほぼ100%d.e.で7のみが生成する。塩化セリウムとグリニャール試薬からなる複合試薬でも同様の反応性を示すことから、その適用範囲は非常に広いと思われる。次に、α-アミノ酸の合成を目指したトリメチルシリルシアニドとの反応は、アミノニトリル体(6、7:Nu=CN,R=H)が容易に異性化するためジアステレオ選択性は良くない。しかしアミノニトリル体を後処理することなく無水酢酸によりアミド体(6、7:Nu=CN,R=Ac)に変換すれば、収率良くしかも異性化を抑えて合成することができる。特にルイス酸として塩化アルミニュウムを用いることにより、ジアステレオ選択性は90%まで向上した。
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