低いエネルギーでC^<5+>イオンを水素原子に衝突させたときに現われる共鳴現象 半古典論に基づく衝突エネルギーの関数としての電子捕獲断面積の計算結果を見ると、低エネルギーではC^<4+>(1s4s)状態への電子捕獲が支配的である。これより量子力学に基づく緊密結合方程式は始状態(C^<5+>(1s)+H(1s))、C^<4+>(1s4s)状態、C^<4+>(1s4p)状態の3つの状態だけを使って解けば十分であることがわかる。この計算結果から(i)衝突エネルギーを小さくしていくと電子捕獲断面積がどんどん大きくなっていくことがわかった。これはorbittingに対応しており、その断面積は0.0001eV/amuの衝突エネルギーで3000A^2にも達する。単純にσ=πb^2にあてはめるとb=30Aにもなり、異常なまでの大きさに驚く。更に(2)共鳴に相当するピークが第1の共鳴に相当するなだらかな増加曲線の上に現われている。このピークはタイプ1からタイプ3の3つの種類に分けられる。これらの共鳴がどういう性格のものであるか調べるためにRydberg-Klein-Rees法を用いて求めた振動、回転準位のエネルギーと断面積のピークの位置の衝突エネルギーを比較した。この結果、タイプ1のピークは8Σ状態のポテンシャルに捕まったために生じた共鳴であることがわかった。一般的にいうと衝突エネルギーを大きくしていくと徐々に角運動量の大きい部分波が断面積に寄与してくるが、衝突エネルギーが丁度ある共鳴状態のエネルギー準位と一致したときだけある角運動量の部分波が極端に大きくなり、これが結局断面積のピークにつながっていることがわかった。タイプ2のピークはStuckelberg振動であると考えられる。タイプ3のピークは始状態がC^<4+>(1s4p)、C^<4+>(1s4s)状態を透熱的に通過したポテンシャルにつかまり準分子を作ったために生じた共鳴である。この型の共鳴の特徴はC^<4+>(1s4p)状態とC^<4+>(1s4s)状態に対応する部分断面積のピークがちょうど逆位相になっていることである。
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