1.4-3.5MeVのLi^+-Li^<3+>イオンをSnTe(001)表面に斜入射し、鏡面反射イオンと、伴走電子(convoy electron)の同時計測を行った。観測された伴走電子は表面航跡により加速されていた。その加速の大きさは、それを伴うイオンの荷電状態には依存しないことが分かった。これは伴走電子の放出後、イオンは荷電変換を激しく行い、放出時の荷電状態の記憶が失われていることを示している。このことから、荷電変換に関するBohrモデル、Bohr-Lindhardモデルを用いて、伴走電子の生成位置を評価すると、表面からおよそ0.05nm以内の位置で放出されていることが分かった。 エネルギー分解能が0.06%の磁場型のイオンエネルギー分析器を用いて、鏡面反射した0.5MeVプロトンのエネルギー・ロス・ストラグリングを測定した。ストラグリングは入射角が大きくなると除々に増加することがわかった。表面におけるエネルギー損失過程は表面電子との2体衝突とプラズモン励起の2つが知られている。それぞれの損失過程で生じるエネルギー・ロス・ストラグリングを計算したところ、実験結果をほぼ説明することができた。エネルギー損失自身には2つの過程が同じくらい寄与していることが知られているが、ストラグリングには、2体衝突過程が主に寄与していることが分かった。
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