レーザーアブレーションによる高温超伝導体薄膜の作成プロセス中の粒子挙動のその場計測にレーザー誘起蛍光法を適用し、アブレーション成膜プロセスにおけるエネルギーおよび粒子輸送について幾つかの知見が得られた。これらをまとめると以下のようである。 (1)酸素ガス中のアブレーションでは、放出粒子はその大きな運動エネルギーにより衝撃波を駆動しながら進展するが、ターゲットからある点でその進展は停止する。その後、拡散より輸送される。 (2)分子の内部エネルギーは、拡散段階でも1000K程度の高温に保たれている。 (3)基板を粒子群の進展位置に対して何処に置くかで、基板との相互作用の様子が異なることを示した。 (4)放出粒子の流体的振る舞いが、酸化程度、付着程度、クラスター化とも密接に関連していると推察される。 本年度は、YO分子の挙動を中心にLIF計測を行ない、その結果を理想的な衝撃波モデルにより解釈し、レーザーアブレーションプロセスによる成膜メカニズムの考察を行なった。今後の課題は、粒子挙動のより詳細な把握を行ない、この解釈の妥当性を確認することである。
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