研究概要 |
本年度は,6名の研究者が,互いに連絡を取りながら,各々が基礎的な乱流の素過程を取り上げ,異なる手法を用いてデータベースの構築,モデル化のための研究を行った. (1)等方性乱流中の熱輸送の直接シミュレーション(DNS)を行い,速度場の計算解像度を増加せずに高プラントル数流体のDNSが可能であることを初めて確認した.浮力効果を伴う水平及び鉛直チャネル内の乱流,あるいは壁面吹き出し・吸い込み,磁場,特異な体積力効果などを伴う剪断乱流のDNSデータベース化を達成し,今後のモデリング研究に提供した.また,熱流束輸送方程式モデルの評価,非平滑面にも適用できる一般化k-ε乱流モデルの検討に着手した.(笠木) (2)乱流モデルとしての3次元離散渦法の挑戦的な研究課題は粘性効果の取り込みである.本研究では円形噴流の発達領域における乱流渦構造を対象として,数種類の粘性モデルの妥当性を検討した.この結果,渦要素の核半径を時間の関数として増加させる方法が有効であることがわかった.また,円形噴流の3次元渦構造の形成には,下流側にある渦による撹乱が上流に伝播して,ノズルの出口で受容されることが本質的な役割を果たすことがわかった.(木谷) (3)レイノルズ応力方程式における散逸項に対し,一般性を阻害する要因である壁面法線ベクトルを除外しながらも,厳密な壁面漸近挙動を既存のモデルより高次まで満たす新しいモデルを開発した.再分配項についても,壁面法線ベクトルと壁からの距離を用いないモデリングを検討した.すなわち,最近提案された楕円型モデルの有望性に着目し,その壁面境界条件の設定方法の問題点を指摘し,その弱点を克服するモデルを提示した.(島) (4)自由乱流と壁乱流の速度場を一つのモデルで解析するために,スペクトルの違いを考慮した多重スケールモデルと圧力歪み相関の効果を組み込んだものを異なった素過程の観点から構築した.また,剥離・再付着を伴う熱伝達を解析するための温度場乱流モデルも構築した.再に,エネルギーの逆カスケードを伴う複雑乱流を解析するために,波数空間乱流モデルの構築に着手した.(長野) (5)軸対称衝突噴流乱流を対象として,画像処理流速計を用いた3次元速度場測定を行い,よどみ領域の乱流特性に関するデータベースを構築した.高解像度測定による乱れの散逸率分布の評価によって,乱流素過程の収支を明らかにした.有限体積法による熱流動解析コードを作成し,k-ε乱流モデルによる予測性能を検討した.(西野) (6)スパン方向に周期的な吹き出し・吸い込みを有する平板間乱流の直接数値シミュレーションを行い,吹き出し強さとスパン方向周期が壁近傍乱流場に与える影響について考察を加えた.DNSデータベースを利用して,スペクトルスキームと差分スキームの比較を行い,両者の差が遷移層において最大となること,対流項の差は拡散項の差と比べて1桁以上大きいことを確認した.(黒田)
|