超音速流・遷音速流などの平均密度が大きく変化する流れの数値計算においては、圧縮性の影響を考慮する必要がある。従来は圧縮性乱流においても非圧縮性のk-εモデルを用いてきたが、これはMorkovinの仮説とよばれる、境界層流れでは主流のマッハ数が5以下、噴流ではマッハ数1.5以下ならば圧縮性による乱流構造の変化はないとの指摘に依存していた。しかし、圧縮性流れの特色である衝撃波などの急激な平均密度の変化のある流れにおいては、その平均密度勾配の大きさに応じて強い密度変動が生産されることが知られており、その密度変動がレイノルズ応力に影響を与えることが予想される。事実、超音速インテークの衝撃波の数値解析においては、乱流モデルの不十分さによる数値予測の限界が見えてきている。 本研究においては、はじめに一様等方性乱流を直接計算し、圧縮性乱流特有の散逸率が存在することや、乱流エネルギーと密度変動の間でエネルギーの変換が起こり、これによって乱流エネルギーが急激に変化し得ること、この変換がいわゆるpressure--dilatation相関項(p--d項)によって担われていることを確かめた。 第二に、直接計算で得られた情報を基に、圧縮性乱流モデルの提案を試みた。吉澤により、密度変動の輸送方程式も解き、それを圧縮性の影響を示すパラメータに組み込んだ3方程式モデルが提案されている。これを基準に、衝撃波を通過する流れにおいて、乱れエネルギーと密度変動の輸送方程式中の圧縮性の影響を示す項のモデル化について考察した。特に、p--d項とdensity--dilatation相関項については、これら2項の差が圧縮性散逸の大きさと連動しており、それと同程度の大きさであることがわかった。このことを利用してモデル化し、数値解析に利用可能な3方程式モデルを提案した。
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