天体プラズマでの回転重力系が普遍的に持つ降着円盤の形成過程などの問題を理解することを念頭に置いて、降着円盤のプラズマ乱流の性質を考察した。特に、連星系パルサーから宇宙空間を伝搬してきたX線のシグナル時系列解析を行い、理論的予測とよい一致を示すことを示した。連星系パルサーから来るX線のシグナルは、従来より非周期的時間変動をする事が観測的に知られていたが、その物理的機構はほとんど理解されていなかった。本研究では、パルサーから来るX線の非周期的時間変動が降着円盤で作られた密度揺らぎを反映していると仮定して、理論的に予想した降着円盤の電磁流体乱流の性質とX線衛星「ぎんが」で観測されたX線の揺らぎのスペクトルと対比させることによって、回転重力系が普遍的に持つ降着円盤の構造を考察した。まず、パルサーの回転軸と磁軸が一般には傾いていると考えられるので、パルサーの回転に伴って中性子星磁気圏に周期的な揺らぎを発生させることが予想される。その密度揺らぎが降着円盤全体にどのように伝播して緩和していくかを理論的に解析すると、降着円盤は幾何的に薄い2次元的ディスク状の場合と3次元的なほぼ球対称の降着の場合とでは、密度揺らぎのスペクトルに違いがあることがわかった。特に逆カスケードの領域で差が顕著であり、連星系X線パルサーの観測で得られた時間変動に対するスペクトルと比較すると、理論の予測にあうスペクトルの変化が見出された。
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