1993年3月末に近傍の銀河M81に超新星SN1993Jが出現した。この超新星は詳しい観測がなされたので、超新星爆発によって合成される重元素量を決める格好の材料となると考え、その爆発モデルを構築した。観測された光度曲線との比較から、この超新星の親星の質量は爆発直前には太陽質量の3から4倍であることを示した。そして、水素の外層の質量がおよそ太陽質量の半分であることも示した。その結果、親星の主系列時の質量は太陽質量の10から15倍であったが、この星が連星系中にあったため超新星爆発を起こすまでに大量の質量放出をしたという結論に達した。宇宙科学研究所のX線天文観測衛星「あすか」によって観測されたSN1993JからのX線は爆発前に大量に放出されたガスと爆発によって吹き飛ばされた物質との衝突によって放射されたと考えられ、この結論と矛盾しない。 また、新たに合成された鉄の量が太陽質量のおよそ8%であることも、光度曲線の解析からわかった。この量は銀河の化学進化を考える上で重要である。今までは、大マゼラン雲に1987年に出現した超新星SN1987Aで合成された鉄の量しか十分な精度では知られていなかった。
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