超新星1987Aの周辺、中心から約0.65光年の距離に形成されていることが観測により明かとなっている高密度のリング状のガス塊について、電磁流体力学的(MHD)過程により解析を行った。軸対称系でMHDシミュレーション解析を行い、赤色巨星、青色巨星及びそれらの星風についての信頼し得るパラメーターを用いてリングの生成をシミュレーションボックス上で再現することに成功した。 星の自転に伴い惑星間空間中に生成されるトロイダル磁場は星風により遠方へと運ばれる。低速(約10km/s)の赤色星風に内側から高速(約550km/s)の青色星風が追いつき、星風-星風相互作用領域では赤色星風のガス及びトロイダル磁場が掃き集められる。磁気圧は磁場強度の自乗で強まるため、そこでは磁気圧が急激に高まり、この効果により赤道面上の相互作用領域にガス塊が集中される。以上の過程が実際にシミュレーションボックス上で確認された。 密度分布だけでなく、磁場の時間空間分布も詳しく解析することが出来た。相互作用領域では衝撃波が形成されるが、0.65光年の位置に前方衝撃波が形成される時の後方衝撃波の位置は0.27光年であり、磁場強度は後方衝撃波と接触面(前方衝撃波のすぐ近く)の間の領域では前方衝撃波の領域ほど大きくはないが、その半分程度の大きさで丘上に増大していることが明かとなった。超新星爆発から約3年後に電波が観測されたことは、爆発物質がこの後方衝撃波に突入したであろう時期とちょうど合い、磁場の強い領域でのシンクロトロン放射と考えれば我々のMHDモデルを強力に支持するものとなる。 本研究結果は国際誌に投稿中である。
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