研究課題
以下、交付申請書の『本年度の研究実施計画』欄の1)〜5)に対応させて述べる。1)ヘム蛋白質(森島):アミノ酸残基Leu29を置換して配位子結合能を制御した数種のミオグロビン、及びジスルフィド結合を新たに導入したミオグロビンの作成に成功し、配位子結合反応の追跡、NMR測定ならびに結晶化を進めている。2)ヌクレオチド結合酵素(勝部、小田):グルタチオン合成酵素のラウエ法による時間分割解析のために、放射光実験施設のBL18及び英国ダレスベリーの放射光実験施設を利用して、X線ダメージの程度及びその対策、回折データの分解能、フローセルを用いた基質導入法等に関し、基礎データを収集した。また、反応速度を極端に低下させた変異型酵素の作成及び結晶化を行い、結晶中での酵素反応速度論的解析を行った。3)リボヌクレアーゼ(三井、上杉):リボヌクレアーゼAの高対称性(三方晶系)結晶のラウエ法による静的X線結晶解析(2.5A分解能)に成功した。またcaged CpUのアナログとしてのdCPTとの複合体結晶を通常の方法で解析し、2.5A分解能の構造を明らかにした。一方、caged CpUの合成に成功し、近紫外光の照射により、活性なCpUが得られることを確認した。4)NMR分光法の開発(楯、三井):チオールプロテアーゼ阻害蛋白質シスタチンAのNMRシグナルの完全帰属を完了した。次にN(15)の緩和時間測定から主鎖の内部運動の解析を行った。また、現在まで報告例のない側鎖の内部運動の解析に向けて、C(13)ラベル化率の低い蛋白質を調製し、側鎖の緩和解析の予備的な実験を行った。5)キサンチン酸化酵素(西野):キサンチン酸化酵素(分子量30万)の結晶化条件を吟味し、3A分解能のデータを収集した。また、ニワトリの酵素の全一次構造を決定し、哺乳類でおこる脱水素酵素/酸化酵素の相互変換がニワトリ酵素では起こらない理由を解析した。