研究概要 |
今年度の研究は次の四点である。 1.時分割ラウエ法の最初の試料として、光でCOが解離し、COが解離してもあまり大きな構造変化を起こさず、COの解離で結晶がこわれず、COは比較的ゆっくり再結合するヘモグロビン(Hb)の候補であるα_2^<87His→Phe>(Fe-CO)β_2(Ni)を組換DNA法と化学修飾で作った。しかし、α^<87His→Phe>の大腸菌での発現効率が低く、最初の試料には適さないことがわかった。急遽α_2(Mg)β_2^<67Val→Ile>(Fe-CO)にのりかえ、これを作り、現在結晶化している。結晶が得られれば、3月のマシンタイムに、変異を導入していない試料とともに、測定にかける予定である。 2.光解離性の架橋試薬BNBAを使って,HbをO_2非結合型(deoxyHb)の構造に固定することを試みた。cagedTstateを作る試みである。BNBAをdeoxyHbと反応させ、その中から2量体に割れなくなった部分を取出し、酸素平衡曲線を測定したところ、O_2が結合しにくくなった成分があった。β93のSH基と、近くのα鎖のLysとの架橋がねらいだったが、β93SHが使われずにβ鎖どうしに架かった可能性が高く、その場合は光解離性が失われているかもしれない。この架橋Hbの性質を明らかにする仕事を急いでいる。 3.deoxyHbの硫安で作った結晶中で、分子間でイオン結合を作っているα鎖のGluとβ鎖のLysの片方を、電荷のないアミノ酸に置換した2種類のHbを組換DNA法で作った。まだ結晶化を試みていない。 4.タンパク分子の結晶中での性質を直接調べる手段として、顕微分光光度計のもとで、単結晶のまわりのO_2濃度を変化させながら、光吸収スペクトルをとることで、酸素平衡曲線を測定できるようにした。
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