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1994 年度 実績報告書

原子レベルのトンネル物性

研究課題

研究課題/領域番号 05245101
研究機関東京大学

研究代表者

河津 璋  東京大学, 工学部, 教授 (20010796)

研究分担者 長谷川 哲也  東京大学, 工学部, 講師 (10189532)
富取 正彦  北陸先端科学技術大学院大学, 助教授 (10188790)
重川 秀実  筑波大学, 物質工学系, 助教授 (20134489)
小川 恵一  横浜市立大学, 大学院・総合理学研究科, 教授 (00233411)
岩澤 康裕  東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40018015)
キーワード走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光法 / シリコン表面構造 / 電荷移動錯体 / 高温超伝導体 / 電荷密度波
研究概要

本研究班では、固体表面の物性の原子レベルでの解明を目的として、走査トンネル顕微鏡法(STM)及び走査トンネル分光法(STS)等により研究を行っている。河津は、Si(100)表面上にGaを吸着させたときに出現する2×2構造について、STM/STSの測定を行った。その結果、Gaの2量体上に集中している空準位は1.6eV付近に存在し、Siの2量体上に集中する占有準位は、-1.6eV付近にエネルギーの極大値を持つことを明らかにし、テンソルLEEDにより決定した原子配置から期待される結果との一致も確認された。Si(113)表面におけるGaの吸着過程、構造、電子状態に関しても研究を進行中である。岩澤は、伝導性金属酸化物であるTiO2(110)清浄面と、この表面に吸着した蟻酸イオン(DCOO-)を、分子内構造(LUMOの形状)を反映した原子分解能で観察することに成功し、本来絶縁性である有機分子のトンネル物性を評価する手がかりを得た。また、電圧パルスを加えて個々の蟻酸イオンを選択して電界蒸発させることにも成功した。小川は、Si(111)7×7の形成過程と欠陥構造について、擬STSの手法によりしらべ、7×7構造が3角形状のドメインの形で成長し、その最外側はfaulted halfで取り囲まれていることを明らかにした。MoS2劈開面上に形成されたArイオン照射欠陥とその電子構造についてしらべ、S面上の照射欠陥が負イオン化しており、そのクーロン反発力により照射欠陥を中心に電子密度の減少した領域の形成されることを明らかにした。重川は、297Kで金属-絶縁体転移を起こす(BEDT-TTF)2PF6のac面の観察を行い、常温で、2つの超構造の存在を確認した。1つは、1次元伝導軸に対して2倍の周期を持つ、通常の電荷密度波に対応する構造であるが、他方は、1次元軸に垂直方向に超構造を持つ。同構造を、転移温度付近での揺らぎの影響と表面での振動モードのソフト化により形成される、表面に局在した新しい相とみなすことにより、薄膜化による転移温度の上昇等比含め、有機材料表面での超構造の特性が統一的に理解される可能性のあり、現在、STS等を含めた実験を進めている。富取は、表面原子の配列・電子状態を再現性よくしらべるために、電界放射による探針評価が可能なSTM/STS装置を開発した。本装置により、Si(111)7×7のSTM観察・STS測定を行った。その結果、STS測定時の高電界印加によって誘起される探針のW(111)面へのSi原子の吸着によるFEM像の変化を確認し、STM像の分解能、トンネルスペクトルの変化との相関を確認した。長谷川は、室温以下で電荷密度波を形成する遷移金属カルコゲナイト1T-Ta(S,Se)2の電子状態の空間変化を、77Kにおいて、STM/STSによりしらべた。1T-TaSe2の場合、トンネルスペクトルは、バンド計算の結果と定性的に一致した。一方、1T-TaSe2では本質的にバンド計算とは異なり、フェルミ面上にギャップがみられ、また、ギャップエッジのピークはCDWの山の位置でいずれも極大になった。この結果は電子間のクーロン相互作用により電子が局在(モット局在)したものと解釈できる。本研究はモット局在を実空間から確かめた初めての例である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] K.Hata,T.Ikoma,K.Hakawa,T.Okano,A.Kawazu,T.Ueda,M.Akiyama,: "Spontaneous Appearance of High Index Facets During the Evolution of Step Bunching on Vicinal GaAs(001)." J.Appl.Pyhs.76-9. 5601-5603 (1994)

  • [文献書誌] Hoshi Onishi,Yasuhiro Inesawa,: "STM-Imaging of Formate Intermediates Adsorbed on a TiO2(110) Surface." Chem.Pyhs.Lett.226. 111-114 (1994)

  • [文献書誌] H.Shigekawa,K.Miyake,H.Ogawa,Y,Aiso,Y.Nannchi,T.Mori,Y.Saito,: "Molecular Structure of a Crystal Phase Coexisting with κ-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2 Studied by Scanning Tunneling Microscopy." Pyhs.Rev.B50. 15427-15430 (1994)

  • [文献書誌] H.Shigekawa,H.Ogawa,K.Miyake,Y.Aiso,Y.Nannichi,T.Hashizume,T.Sakurai,: "Selenium-Treated GaAs(001)-2×3 Surface Studied by Scanning Tunneling Microscopy," Appl.Pyhs. Lett.65. 607-609 (1994)

  • [文献書誌] M.Tomitori,K.Watanabe,M.Kobayashi,O.Nishikawa,: "Scanning Tunneling Microscopy/Scanning Tunneling Spectroscopy Study of Ge and Si Dimers on Si Substrates," J.Vac.Sci.Technol.B12. 2022-2025 (1994)

  • [文献書誌] J.・J.Km,W.Yamaguchi,T.Hasegawa,K.Kitazawa,: "Observation of Mott Localization Gap Using Low Temperature Scanning Tunneling Microscopy in Commensurate 1T-TaSe2," Pyhs.Rev.Lett.73(15). 2103-2106 (1994)

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公開日: 1996-04-08   更新日: 2016-04-21  

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