研究概要 |
衝撃波を利用する爆発成形・衝撃反応合成プロセシングでは、爆轟にともなう高圧・高温の過渡応答を利用するために、事前にその過渡応答を解析し、対象とする実験系・セルにおいて、衝撃波構造を明らかにすることが重要となる。研究者が対象としている金属材料の衝撃成形、金属/セラミック粉末の成形・固化および高融点金属アルミナイドの衝撃反応合成プロセシングでは、圧力範囲が30GPa以下、温度が3000度以下の範囲での高圧力・高温過渡を扱うことに加えて、以下の5つの条件を満たすべき解析方法が、関連材料プロセシング設計には必要となる:1)実験でのセル体系が平面/軸対称系であるため、2次元・軸対称解析が実行できること、2)爆轟に際しては、爆薬に関するモデルをデータベースとして有していること、3)対象が粉末である場合には、ポロシティー変化にともなう比容積・圧力変化を考慮できること、4)対象とする系によっては圧力過渡中の相変化および固相-液相変化を考慮すること、5)高融点金属アルミナイド合成に伴う反応過程を追跡すること。本年度の研究では、1)、2)、3)および4)を中心として2次元/軸対称解析コードを開発した。 解析として、水中での爆轟成形プロセシングを選択し、爆薬-対象材料(SUS,Ni,Alの薄板材料)-圧力媒体(水)からなる連成モデルを扱った。爆薬に関しては、JWL構成方程式を基本としたが、KHTモデルによるデータベースも完備することができた。金属材料に関してひずみ速度依存性を考慮した応力-ひずみ関係を用い、速度効果を考慮できるようにした。圧力媒体に関しては、引張応力状態における破壊(Spallation)も考慮した。最初の解析例では、剛体壁の形状を双曲線型・円錐型・楕円型に変化させて、それによる圧力波の変動を調べた。その結果、双曲線型に近いほど減衰が少なく、また薄板材料変形も大きいことがわかった。特筆すべきは衝撃波の安定性と材料変形への圧力効果であり、前者には剛体壁の形状が大きく関与し、後者では衝撃波構造が大きい影響を与えることがわかる。 開発したシステムの実用性を検討する目的で高速炉炉心溶融事故の模擬実験系の直接シミュレーションを試みた。炉心溶融モデルとして爆薬を用い、圧力容器内部での圧力過渡と容器形状変化を検討した。実験でも報告されたように容器形状変化は4つのプロファイルの分類できることを確認したことに加え、圧力容器頭部での圧力過渡には2つのピークが存在し、特に2波は、1波に対応する縦衝撃後に、圧力容器側面の弾塑性変形を介してモード変換された圧力ピークであることが判明した。この物理的考察は本研究が最初である。
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