(1)インスリン受容体にG蛋白活性化配列があるか否かを明らかにするために、インスリン受容体に我々のG蛋白活性化配列criteriaを適用した。得られた3箇所の配列ペプチドを合成し、各精製G蛋白に対する活性化能を調べた。その結果、インスリン受容体がG蛋白活性化能を有することが判明するとともに、自己リン酸化がインスリン受容体機能の増幅に重要な役割を演じていることが明らかとなった。 (2)我々のcriteriaを機能不明蛋白に適用して、新たな発明をもたらした例として、APP(アミロイド蛋白前駆体)がある。APPは受容体様構造を取るが、機能不明であった。第657-676残基が我々のcriteriaを満たすことが判明し、この20残基が特異的にGoを活性化することも判明した。 (3)次に我々は、ペプチドレベルで見い出されたG蛋白活性化配列が実際の受容体内で機能することを明らかにするために、IGF-II受容体のGi活性化配列Arg^<2410>-Lys^<2423>を、beta_2-アドレナリン受容体のGs活性化配列Arg^<259>-Lys^<273>と入れ換えたキメラIGF-II受容体cDNAを作製し、培養細胞COS7に導入した。キメラIGF-II受容体発現細胞膜では、IGF-II非存在下で既にcAMP産生量の促進が見られた。少量のIGF-II処理で更に上昇しsaturationに達した。これはわずか14-15残基の入れ換えで、Gi共役受容体であるIF-II受容体をGs共役受容体に変換することが可能であることを示している。IGF-II受容体の細胞内領域の高々14残基がGi共役機能を担っているということのinvivoでの証明でもある。 (4)我々はこれまでG蛋白活性化配列についての研究を行ってきた。今回我々は新たに、G蛋白自身に自らの活性を制御する配列を発見した。Gi_<2alpha>内のAsp^<338>-Cys^<352>を合成し、Gi_2活性化ペプチドによるGi_2活性化に対する抑制能を調べたところ、容量依存性にGi_2特異的に活性化を抑制することが明らかとなった。
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