研究概要 |
パーキンソン病の変性神経細胞に特徴的な封入体であるLewy小体(LB)は、界面活性剤に高度の不溶性を示す径10nm前後の中間径フィラメント様線維を骨格として形成されているがその成分には不明の点が多い。LB filamentの構成成分の同定を目的として、汎発性Lewy小体病(DLBD)大脳皮質からの皮質型LBの単離精製法を確立し、蛋白化学的解析を試みた。DLBD皮質をhomogenize後ショ糖密度勾配遠心法で分画し、1.5/2.2M界面に細胞核、血管断片などと共にLBを回収した。この画分をサルコシル処理し電顕観察したところ、LBのfilamentのみが残存し、膜性成分・無定型物質は消失した。同時にユビキチン免疫反応性も消失し、LB内でユビキチンは線維性分以外の要素に結合していることが示唆された。未処理の抗ユビキチン抗体もしくは抗ニューロフィラメント抗体RMO32でラベル後、FITC化2次抗体で蛍光染色し、セルソーター(Coulter,Epics Elite)でLBを分離した。側頭葉、帯状回などの好発部位では脳1gから5-10万個のLBが回収可能であった。セルソーター分離後のLBを1%Sarkosylで処理し、膜性成分などを除去した後、蟻酸で可溶化し、アミノ酸分析により蛋白定量を行ったところ、LB1個当りの蛋白量は5-10pgと推定された。さらに蟻酸可溶画分を臭化シアン、リシルエンドペプチダーゼで消化し、逆相HPLCでLB由来ペプチド断片の分離を試みた。いくつかのpeakが得られたが、試料の大半は明瞭なpeakを形成せずに溶出し、LB成分の高度のプロテアーゼ耐性が示唆された。今後さらに蛋白化学的分析を進めると同時に、精製LBを抗原としてモノクローナル抗体作製を試み、LB線維の由来と修飾様式について解析を進める予定である。
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