研究概要 |
1-methyl-4-phenylpyridimiumはパーキンソン病類似の症状を引き起こす物質として最初に発見された物質である。パーキンソン病患者においてはミトコンドリア呼吸鎖複合体IのNADH dehydrogenase活性が低下していることが報告されており、1-methyl-4-phenyl-pryidimiumはこのNADH dehydrogenase活性を阻害することによりミトコンドリアの呼吸活性を抑えることが知られているが、これは天然に中枢神経系に存在する物質ではない。実際に中枢神経系内から検出されたものとしてはtetrahydroisoquinoline類、beta-carboline類があるが、そのミトコンドリアへの影響はあまりよく調べられてはいない。そこで真のパーキンソン病誘因物質の探索のためにこれらの物質の誘導体、1-methyl-benz[f]quinolinium、2-methyl-pyridino-[2,3-f]isoquinolinium、1,2-dimethyl-tetrahydoroisoquinolinium、1-methyl quinolinium、2-methyl-tetra-hydoro-isoquinolinium、norharman、2-methyl-norharmanium、1-methyl-4-phenyl pyridimium、2,9-dimethyl-norharmaniumの9種類についてミトコンドリアの生理活性に対する影響を調べた。norharman以外は、submitochondrial particleに対して約10^<-4>〜10^<>-3 Mの濃度で50%のNADH dehydrogenase活性阻害を示した。intactのミトコンドリアに対しては、これらのカチオン性のパーキンソン病誘因物質は、その膜透過を促進するtetraphenyl boron anionの存在下で約10^<-6>Mの濃度で50%の呼吸阻害を示した。また、norharmanは両活性に対して50%阻害を与える濃度に差が見られなかった。さらにバリノマイシンまたはcarbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazoneの添加が、ミトコンドリアの呼吸活性に対するこれらの誘導体の阻害効果を阻止することから、ミトコンドリアにおいては膜電位に依存したパーキンソン病誘因物質の濃縮が起こっていることが示唆された。これらのパーキンソン病誘因物質のミトコンドリアへの濃縮は、tetraphenyl boron anionを含ませた塩化ビニル膜を用いたイオン電極によって実際に測定することができた。
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