酵母において小胞体-ゴルジ体間の蛋白質輸送に関与するUso1蛋白は、1790アミノ酸よりなる親水性蛋白で、C末端側1070アミノ酸がcoiled coilのαヘリックスを形成して繊維状の二量体となって機能している。温度感受性uso1-1変異株では、951番目のコドンがナンセンス・コドンTAGに変異していることを昨年度明らかにしたが、温度感受性形質が培地中のカルシウム濃度を増すと抑制され、許容温度においてもカルシウムキレーターEGTAに対する感受性が高いなどの性質があることから、467-479残基目に認められるカルシウム結合共通配列がUso1蛋白の機能に必須である可能性が示唆されていた。本年度はこの点を調べるため、部分精製したUso1蛋白質及びこの領域を含む合成ペプチドと^<45>Caの結合を検討したが、いずれも結合は認められなかった。そこで、共通配列を破壊した変異遺伝子を4種類プラスミド上で作製し、uso1-1変異株及びLEU2マーカーによる遺伝子破壊株に導入したところ、いずれも25℃から37℃まで生育可能であった。以上の結果からカルシウム結合共通配列と考えていた領域は実際には機能をもっていないことが明らかとなった。 ナンセンス変異による短いUso1蛋白質が温度感受性を示すことについて調ベるため、プラスミド上でC末端側からUSO1遺伝子を欠失させてゆき、uso1遺伝子欠失株に導入して調べたところ、N末端から1084アミノ酸までのものは33.5℃までは生育するが37℃では生育せず、723アミノ酸まで及びそれ以下のものはまったく生育が認められなかった。このことから、野生型Uso1蛋白質に1070アミノ酸あるcoiled coil領域は330アミノ酸以上ないと蛋白質が37℃で機能できず、200アミノ酸まであれば低温で機能でき、この領域をもたないものは機能を失うことが分かった。
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