本研究の目的は、定量性があり且つオルガネラ中の局在部位を判定し得るペルオキシソーム蛋白質の輸送実験系を確立することである。哺乳動物の非特異的脂質輸送蛋白質(ステロール運搬蛋白質-2とも呼ばれる)は肝細胞ではペルオキシソームのマトリックスに存在すると報告されているが、機能の説明が困難であり、C-末端のペルオキシソームへの輸送信号(A-K-L)の他にN-末端に20残基からなるプレ配列をもつことから、その細胞内局在に関する定説がまだない。我々がPXP-18と名づけたキャンディダ酵母の16-kDa蛋白質は構造的、機能的にこの蛋白質と相同であるが、C-末端はP-K-Lでプレ配列をもたない。PXP-18を輸送のモデル蛋白質として以下の成果を得た。 1)先ずキャンディダ酵母細胞を通常の方法で分画し、細胞内で発現されるPXP-18の75%以上がペルオキシソーム画分に存在することを示した。次にオルガネラを可溶化する前後でPXP-18を固相酵素抗体法で定量して、その95%以上がペルオキシソームのマトリックスに局在することを明らかにした。最後に免疫電子顕微鏡法によって、この結論を確認した。 2)抗PXP-18抗体と反応する蛋白質をもたないパン酵母細胞内でPXP-18を発現させ、その大部分がペルオキシソームのマトリックス内部へ輸送されていること、僅かにミトコンドリア画分に認められたPXP-18はそのほとんどがミトコンドリアの表層に存在することを明らかにした。 3)PXP-18のC-末端からP-K-Lを除くと、この短縮型蛋白質はペルオキシソームへ全く輸送されなくなること、従ってこの3残基がペルオキシソームへの輸送信号として機能していることを示した。
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