研究概要 |
1.ペルオキシソームの3-ケトアシル-CoAチオラーゼのN末端延長ペプチド部分にペルオキシソーム移行シグナルの活性があることはすでに明らかにしたが,この部分の荷電アミノ酸について部位指定突然変異を導入し、移行活性に対する影響をin vivoの実験によって調べた。^<-24>Argについては、リジンを含めて他のアミノ酸はすべて無効であった。一方、^<-17>Hisはグルタミンとは置換可能であったが、他のアミノ酸は無効であり、特に塩基性アミノ酸や疏水性アミノ酸に置換すると、ミトコンドリア輸送シグナル活性が出現した。また^<-11>Gluをアスパラギン酸以外のアミノ酸に置き換えると、ペルオキシソームとミトコンドリアの両方に移行するようになった。これらの結果は、チオラーゼの延長ペプチドが既知の典型的ペルオキシソーム輸送シグナルとは全く異なる機構で認識されることを示すと共に、ミトコンドリアシグナルとの予想外の近縁性を示唆している。 2.ペルオキシソーム増殖剤によるbeta酸化系遺伝子の誘導に関与すると考えられている核内レセプターPPARの細胞内動態を調べる実験を行った。まず大腸菌の発現系によって得られたPPAR蛋白質を抗原としてウサギに免疫し、抗体を調製した。PPARの発現ベクターをトランスフェクションした培養細胞に対し、この抗体を用いて蛍光抗体染色を行ったところ、PPARを発現している細胞のほぼ全てについて核が染色された。ペルオキシソーム増殖剤の有無は結果に影響しなかったので、PPARは恒常的に局在すると考えられる。この時、トランスフェクションが起きている細胞のうち、PPARを発現している細胞は一部に過ぎないという結果が得られた。この発現の比率は細胞の種類によって非常に異なることがわかったので、その原因が細胞内の他の蛋白質との相互作用の違いによるものである可能性を考え、現在検討中である。
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