動物細胞でのターゲティングの頻度を測るための簡便な検定系を開発するとともに、相同組換え頻度をあげるための1つの試みとして、大腸菌由来ではあるが現在最もその性質の明らかになっている相同組換え酵素RecAを動物細胞内に導入しその効果をみた。相同組換え検出系は、点突然変異によりジフテリア毒素に耐性となったペプチド鎖伸長因子2(EF-2)を利用した。すなわち毒素耐性型EF-2遺伝子のプロモーターを含む第1エクソンを欠き、3'側フランキング領域に第2の選択マーカーであるneo遺伝子を挿入したpXEF2neoをターゲティングベクターとした。これにより、毒素耐性かつG418耐性のコロニーの数を測定するだけで相同組換え頻度を算出できるようになった。さらに大腸菌由来のRecAタンパクのC末側に核移行シグナルを付加したT-RecAを作成し、動物細胞の核内で機能するようにRecAを改変した。このT-RecAは野生型RecAと同様の生理活性をもち、動物細胞で発現させると予想通り核に局在することを明らかにした。このT-RecAを恒常的に発現している細胞E13やE11を用いて、上記の検定系で相同組換え頻度を測定した結果、野生型のCHO細胞よりも相同組換え頻度が約3倍程度あがっているという結果を得た。T-RecAにより組換え頻度があがっているとしたら、プラスミド-プラスミド間での相同組換えも効率よく行なわれると考えられる。そこでDR、DLという一部欠損をしたNEO遺伝子をもつプラスミドを両方同時に細胞内に導入しG418耐性を示す細胞のコロニー数を野生型細胞とE13細胞やE1細胞との間で比較した。残念ながら現在までのところ有意な頻度の上昇は認められていない。単鎖のプラスミドを用いるなど今後のさらなる検討が必要である。
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