研究概要 |
ウシ平滑筋におけるミオシン軽鎖リン酸化酵素(MLCK)として,分子量155kDaおよび130kDaの2種の成分が示された。ミオシン軽鎖のリン酸化活性とアクトミオシンの相互作用を活性化する作用は,2種のMLCKで必ずしも一致しないことから,我々は,分子量の大きい155kDa成分を制御因子(Ln)と考えている。これまで155kDa成分は煩雑な操作により分離されてきたが,今回は20mM MgCl_2による選択的抽出法と中性条件でのQAE-トヨパールカラムクロマトグラフィーを組み合わせる方法が確立され,研究を容易に進めることが可能となった。ウシ平滑筋155kDa成分のN末端はブロックされておりペプチドシーケンサーによる分析結果は得られなかった。一方,130kDa成分については,電気泳動したゲルをニトロセルロース膜に転写した後,膜を切り取り,ペプチドシーケンサーで分析すると,VKPAETPKPL-の配列が得られた。130kDa成分は蛋白分解酵素により155kDa成分のN末端側を切断された分解産物であり,分解で失ったN末端部分がアクトミオシン活性化に重要な機能を担うことを示している。トリ砂嚢MLCKを抗原として作成した単クローン抗体(GK127)は,ウシ平滑筋155kDa成分と免疫交差反応性を示すが,130kDa成分とは反応しないので,GK127を155kDa成分のN末端部分を追跡するプローブとして用いた。ギ酸中で155kDa成分をBrCN分解すると分解断片のうちGK127と反応する成分としては,52kDaペプチドおよび少量の44kDaペプチドが得られた。これらのペプチドは,両者ともにN末端アミノ酸を見いだせないことから155kDa成分のN末端側ペプチド断片と結論された。これらN末端BrCNペプチドは,スピードバックコンセントレータで過剰のBrCNを除いた後,中性条件下,GCL2000をもちいた高速液体ゲル濾過クロマトグラフィーをおこなうと高収量で調製できた。分離ペプチドは平滑筋アクチンフィラメントと堅く結合した。
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