気道上皮細胞を有する細気管支輪状標本にグアネシジン存在下に電気刺激(EFS)を加えるとれん縮様収縮(以下収縮)が発生する。この収縮は、アトロピンおよびフグ毒感受性を示し、その大きさは漸減現象を示し、5分間に一度の繰り返し刺激(20Hzでの10回刺激)を加えると約30分間で完全に消失する。インドメタシンはこの漸減現象の時間経過を延長するが完全には抑制しない。しかしインドメタシン存在下にlipoxygenase阻害剤(AA861)、あるいはロイコトリニン阻害剤を加えるとこの漸減現象は完全に消失した。そこで気道上皮細胞を培養し、その培養上清中に迷走神経-効果器伝達阻害因子が存在するか否かを検討した。気道上皮培養上清(以下培養上清)は、気道上皮細胞を剥離した細気管支輪状標本のEFSによる収縮反応を抑制した。培養上清による収縮抑制効果は培養上清により異なり、26例の培養上清のうち4例はEFSによる収縮反応を完全に抑制し、残りの22例では、部分的に抑制したにすぎなかった。培養上清による収縮抑制効果をさらに検討する目的で、【.encircled1.】気道上皮細胞を正常培養液、【.encircled2.】インドメタシン存在下、【.encircled3.】AA861存在以下および【.encircled4.】インドメタシン+AA861存在下で培養し、収縮抑制効果を観察するとその強さは【.encircled1.】>【.encircled3.】>【.encircled2.】>【.encircled4.】の順序であった。さらにこれらの培養上清に含まれるPGE_2をラジオイムノアッセイした。PGE_2は、各培養上清に5ng〜30ng/mlの濃度で含有され、PGE_2の含量が多い培養上清は、強い収縮効果を示し、この効果はインドメタシン存在下での培養により完全に消失した。我々はすでに外因性および内因性PGE_2が気管平滑筋組織において迷走神経効果器伝達の阻害因子であることを証明している。(Am.Rev.Respir.Dis.143:s6-s10)。したがって本実験により気道上皮細胞由来の迷走神経-効果器伝達の阻害因子もPGE_2であると結論できる。
|