研究概要 |
[研究目的]食生活と癌制圧との関係には,大別して二つの視点,即ち,発癌予防および既製の癌の増殖・転移を阻止する食品の設計ないし食事構成の確立が考えられる.本研究は,後者の視点に立っている.癌細胞は原発巣で増殖し,その一部は原発巣から離脱し脈管系を移動して遠隔臓器に定着,浸潤して転移先臓器で再び増殖するものと考えられる.浸潤は癌転移の過程の中でも最も重要な段階である.腹水肝癌AH109A細胞は培養系および腹腔内,皮下でよく増殖し,転移も起こす.本研究ではAH109Aを用い,既製の癌の増殖・浸潤・転移を阻止し結果として宿主の延命をもたらす食品成分の探索と分離を目的とし,まず一次スクリーニングとしてin vitroの増殖能測定系および浸潤能測定系で各種食品抽出物の癌増殖および癌転移に対する作用を解析する. [方法]1.検体調製:各種食品はよく洗浄して細切し,そのままあるいはリン酸緩衝液中でホモゲナイズ後の遠心上清,または煮出した煎じ液のろ液をとり,pH等を調整してろ過滅菌し供試検体とした.各検体の培地中濃度は0,0.1,0.5,1.0%とした.2.アッセイ系:(1)In vitro増殖能測定系;10%牛血清を含むDM-160培地中でAH109Aを培養後,[^3H]チミジンの取り込みまたはMTTアッセイによって増殖能を測定した.(2)In vitro浸潤能測定系;明渡らの方法に準じ,ラットの腸間膜より中皮細胞を分離・初代培養し,コンフルエントになったところでAH109A細胞を重層して検体とともに培養後,中皮細胞層下に浸潤した細胞数またはコロニー数を計測して浸潤能の指標とした. [結果]増殖も浸潤も抑制する食品として,緑茶,紅茶,ウーロン茶,カラス貝が,増殖を抑制する食品としてニンニクが,浸潤を抑制する食品としてホウレンソウ,ショウガ,ニンジン等が認められた.このように,現在までのところin vitroでの増殖,浸潤ともに抑制する食品として,特にお茶類の作用が強かった.さらに,in vitroスクリーニングを進めつつ,作用の強い食品についてはin vivoでの効果を検討する予定である.
|