本年度は、これまでの研究に基づき、チトクロム酸化酵素(複合体IV)の二次元結晶化とチューブ状結晶による三次元再構成を行い、さらに、チトクロムbc1複合体(複合体III)の三次元構造もチューブ状結晶から解いた。チトクロム酸化酵素のチューブ状結晶に脂質を加えると、チューブが開きシート状の二次元結晶が得られることは、昨年までに見い出した。これに加えて、まれではあるが、脂質を加えなくとも開いたチューブが観察され、分子の2次元結晶中での配置は異なっていた。それを利用して分子の境界の大略を決めることができた。この結果、これまでの説とは異なり、チトクロム酸化酵素はマトリックス側にも約40Aつき出していることが判った。また、脂質二重膜にそった大きさも違っていた。一方、チューブ状結晶はpHを下げ、亜鉛を加えることで細く安定なものをつくりえることが判明し、20A解能で三次元構造を解いた。これまでのチューブ状結晶では、脂質二重膜がチューブの円筒状の壁をつくっていたが、この場合は、膜面はチューブ軸に垂直であった。 開いたチューブからの情報をもとにして、ダイマーを切り出すことができ、2回対称性をいれて平均することもできた。得られた分子像は、これまでに得られた信頼に足るデータのすべてをよく説明するものであり、これまでのチトクロム酸化酵素の分子モデルは大きく変更しなければならないことが判明した。なお、これまでのダイマー結晶の解釈は分子境界のとり方が誤っていたと考えられる。この結果は高分解能のX線回折パターンをもよく説明するものであった。
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