酢酸菌Acetobacter acetiの呼吸鎖末端オキシダーゼは振盪培養によってチトクロムa_1を、静置培養によってそれがチトクロムoを生成する。しかも、そのチトクロムa_1とチトクロムoが相互に非常に高い相同性を有し、同一のペプチドより成ることが示唆されている。本研究では、酢酸菌のこの特異な末端オキシダーゼの変換機構を解明するため、それら両オキシダーゼが単一の構造遺伝子から発現しているか否か、さらに通気培養条件によって両末端オキシダーゼの変換が起こるのか否かを明らかにすることを目的とした。 1.両オキシダーゼが同一の構造遺伝子から発現するのか否かを調べるために、大腸菌チトクロムoサブユニットIの構造遺伝子の塩基配列(CyoB)から推定される保存性の高い領域と酢酸菌チトクロムa_1サブユニットIの構造遺伝子CyaAをプローブとして、振盪培養及び静置培養した菌体から調製したゲノムDNAを種々の制限酵素で処理したもののサザンブロット解析、及び両培養菌体から調整したmRNAでのノーザンブロット解析を行った。その結果、本菌はの同一の構造遺伝子からチトクロムa_1とチトクロムoをそれぞれ生成していると結論された。 2.静置培養と振盪培養での末端オキシダーゼ生合成の調節機構を解明するため、各培養におけるヘム成分の発現と酸素分圧との関係を調べた。その結果、酸素分圧が増加することで、両培養ともヘムoとヘムaの変換は起こらなかったが、それらの量が大きく減少することが示された。それにともなって、酵素活性の大幅な減少もみられたが、酵素蛋白及びそのmRNAの減少はさほど大きくないことも示された。 これらの結果より、本菌は同一の構造遺伝子からオキシダーゼ蛋白を生成するが、静地培養菌と振盪培養菌で合成されるヘム成分が異なっており、しかもそれらの合成はオキシダーゼ蛋白の合成とは協調していないことも示された。
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