本研究においては培養神経細胞を用いて神経突起末端部からの伝達物質放出に対する逆行性情報伝達物質の影響を、【.encircled1.】活性ゾーンを持つ場合、【.encircled2.】活性ゾーンを持たない場合それぞれについて解析することを目的とした。【.encircled1.】活性ゾーンを持つ場合については、胎生15日のラット胚より脊髄後根神経節(DRG)細胞および脊髄神経細胞を酵素処理により単離した後、共培養してシナプスを作らせた。10-20日間培養後、DRG細胞からシナプス入力を受けていると思われる大型脊髄神経細胞よりホールセル・パッチクランプ法によって記録すると自発性の興奮性シナプス電流(EPSC)が見られた。事象の大きさは4-40pAに分布していた。単一サイトからの放出という保証はないので詳細な量子解析は行わなかったが、平均頻度33events/sec、大きさの平均値14pAであった。この自発放出に対する逆行性情報伝達物質候補物質の影響を探るため、アラキドン酸(50muM)、Naナイトロプルッシド(100muM)を投与した。しかし、どちらの物質も上記の平均epsc頻度、epscの大きさの平均値に有意差を生じさせなかった。【.encircled2.】については単独培養したDRG細胞の神経突起先端部(活性ゾーンを持たない)からの伝達物質放出について検討した。まず、神経突起が軸索と考えられるかについて検討した。中枢神経細胞において軸索特異的蛋白質であるタウに対する抗体で染めたところすべての神経突起はタウ陽性となり、神経突起は軸索である可能性が強く示唆された。また、神経突起先端部はシナプス顆粒膜特異的蛋白質シナプトファイシンに陽性であり、顆粒の存在が示された。放出及びそれに対する逆行性情報伝達物質の影響についてグルタミン酸受容体膜をはりつけたパッチ電極を用いて現在検討している。
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