研究課題
HIVは感染後潜伏持続感染に移行し、CD4リンパ球が徐々に破壊され、免疫不全と結果するか、何らかの要因により、著しい活性化が起こり、日和見感染や腫瘍等の合併症により死に至る。潜伏持続感染から全身リンパ節の系統的・持続的腫瘍を伴う発症機序に関して、前回ヒトヘルペスウイルス6(HIVと標的を同じくする)の関与を病理学的、ウイルス学的に示唆したが、今回は感染者の病態の推移とEBVとの動態について検討し、次の結果を得た。1 大腸菌で発現させたglutathione-S-transferase(GST)融合蛋白(HIV-p17、p24、integrase、EBV-ZEBRA)と抗GST単クローン抗体(1G05)を用いたサンドイッチ法によるELISA系で、HIV感染者(36名の感染者からの147サンプル)における血清中の特異抗体を定量可能となる迅速で安価なELISA測定系が確立できた。2 感染者からの全血清サンプルが少なくとも1種類のHIV抗原と反応した。3 抗EBV-ZEBRA抗体は感染者において出現頻度が高い傾向が見られた(p<0.001)。4 HIV感染者(36名内の26名)における経時的変化では以下の特徴的な5種類のパターンが観察された。1)CD4陽性細胞比の減少と抗HIV抗体の減少に相関2)CD4陽性細胞比の安定時には各抗体の動態も安定3)抗p24抗体の減少と抗p17抗体の上昇の逆相関4)抗ZEBRA抗体と抗integrase抗体の動態に相関5)抗ZEBRA抗体の上昇