研究概要 |
感覚器の形成においてproneural genesとneurogenic genesの相互作用により母細胞が出現すると、引き続いて母細胞が将来どのタイプの感覚器をつくるかというspecificationが起こる。現在のところ、外部感覚器か内部感覚器かという選択のスイッチングにはpox-neuro遺伝子がキー遺伝子として重要な役割をはたしている事が分かっている。この段階に働いている遺伝子のネットワークの詳細を明らかにするため、感覚器母細胞に発現している遺伝子をエンハンサートラップ法で分離する事を試みた。およそ1,000のエンハンサートラップ系統を得、その内ほぼ半数の系統で翅成虫原基を調べた結果、感覚器母細胞あるいはその周囲(proneural cluster)でレポーター遺伝子が発現しているものが15系統単離された。その内、化学刺激受容感覚器に特異的な発現をするのが2系統(chemo-1,chemo-2)、また機械刺激受容感覚器に特異的な発現をするのが1系統あった。chemo-1及びchemo-2では胚でも同様に母細胞とその周囲で発現するが、特に、chemo-1では各体節に2対存在するpoly-innervated sense organの母細胞に特異的な発現が見られた。これらの系統での突然変異の表現型を調べるため挿入されたP因子の再転移による突然変異体の分離を行っている。また、機械刺激受容感覚器に特異的な発現をする系統では、特定の剛毛(感覚器)が減少する表現型を持っている。この系統の成虫原基での発現パタンの変化や胚での発現パタンを現在解析中である。また、低頻度であるが剛毛が減少する突然変異の系統の中には、胚での発現パタンが末梢神経細胞に特異的な系統も2系統得られている。今後、これらの遺伝子群の階層性などを調べることにより、感覚器形成の遺伝子制御の実体が明らかにされると期待される。
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