研究概要 |
アクチビンやTGF-βの受容体はそれらの遺伝子構造から、細胞内領域にセリン/スレオニンキナーゼをコードしていることが知られている。したがって同じTGF-βスーパーファミリーに属するBMPの受容体遺伝子もセリン/スレオニンキナーゼをコードすることが予想された。そこで我々はBMPに対して感受性のあるマウスMC3T3-E1細胞のmRNAからRT-PCR法を用いて新しいセリン/スレオニンキナーゼをクローニングし、その中からBMP受容体遺伝子を同定することを試みた。単離された数種類のcDNAからmRNAを合成し、初期胚に微量注入することにより機能のスクリーニングを行なった結果、細胞質キナーゼドメインを欠失させた(ドミナントナガティブ)変異受容体をツメガエル初期胚の腹側で発現させることによって腹側構造を背側構造に変換する遺伝子、mTFR11を同定した。同遺伝子からRNAを合成し、16細胞の腹側割球の赤道領域に注入すると神経胚期には神経管に分岐が見られ、その後背側構造が重複した二次胚に発生する。これは腹側誘導因子のシグナルが遮断されたことによって腹側が背側化したことによるものと思われ、同時にmTFR11がBMP受容体をコードしているものと推測された。この結果はBMPがショウジョウバエの背腹軸形成に関わる遺伝子dppに構造上も機能的にも相同であることを強く示唆する.したがって我々はマウス由来のドミナントナガティブBMP受容体遺伝子をショウジョウバエに遺伝子導入した個体を作成し,形態形成における影響を調べた.その結果,眼の形成においてdpp変異体に見られる表現型が確認されたことから,同受容体はショウジョウバエのdppの機能を阻害したものと考えられる.
|