1.エンハンサートラップ法による神経筋接合部形成に異常を持つ突然変異体の探索(吉原担当) 我々は、神経筋接合部形成に働いている分子を遺伝学的に同定する目的で、エンハンサートラップ系統のスクリーニングを行っている。この目的のために、(1)運動神経細胞あるいは筋細胞での発現が見られる(2)孵化不能、即ち、致死である、という二つの基準を満たすものを候補として選択している。神経軸索でもレポーター遺伝子の産物が見られるKZTRAPの挿入系統を樹立する作業を続けており、現在の所、400の挿入系統を樹立しているが、95系統が致死であった。1acZの発現についてはまだ調査中であるが、そのうちの1系統においてはCNSのニューロピル及び末梢へ向かう神経軸索で1acZが発現していた。この致死系統の詳細な解析はまだ行っていないが、このことから、我々の方法が上に述べた目的に対して有効であると考えられるので今後このスクリーニングを続け、神経筋接合部形成突然変異の候補とし、続いて形態学的手法及び電気生理学による解析を行う予定である。 2.正常な神経筋接合部形成過程の記載 (1)形態学的記載(吉原担当);神経筋接合部でのシナプス形成の過程を、主に抗HRP抗体を用いて光学顕微鏡のレベルで追跡した。また、電子顕微鏡を用いてシナプス形成の過程に於ける微細形態の変化を記述している(ミシガン州立大学Rheuben博士との共同研究)。 (2)電気生理学的記載(城所担当);胚期において、神経筋接合部での自発的なシナプス電流の変化をwhole cell patch clamp法によって解析した。その結果、胚発生の後期(stage17)においてシナプス伝達の効率が大きく変化することが明らかになった。
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