動物細胞の増殖・分化を制御するシグナル伝達系において、MAPキナーゼの活性化を介したカスケードが、重要な役割を果たしている。最近、西田らによりショウジョウバエにおいて、Draf-1の下流で作用するDsor-1がMAPキナーゼキナーゼと相同性を示すことが明らかにされた。そこで、Dsor-1が酵母のMAPキナーゼキナーゼの機能を相補するか検討した。酵母には、プロテインキナーゼC(PKC1)を介したシグナル伝達系におけるPKC1-BCK1-MKK1/MKK2-MPK1の系と、接合因子によるシグナル伝達系におけるSTE11-STE7-FUS3/KSS1というMAPキナーゼカスケドが作用している。このうち、MKK1/MKK2とSTE7がMAPキナーゼキナーゼに相当する。野生型のDsor-1をmkk1mkk2二重変異株およびste7変異株に導入したが、それらの機能は回復しなかった。ところが、Dsor-1の活性型変異Dsor-1^<Su1>はMKK1/MKK2とSTE7の機能を相補することが明らかになった。次に、酵母のシグナル伝達系をモデル系として、ショウジョウバエにおけるシグナル伝達系に関与する遺伝子を分離する目的で、Schneider細胞から作製されたショウジョウバエのcDNAライブラリーを用いて、酵母のMAPキナーゼの活性化を介したシグナル伝達機能を制御する遺伝子を分離した。そのDNA配列の解析から、この遺伝子はショウジョウバエのMAPキナーゼをコードし、すでに分離されていたMAPキナーゼDErkAとは異なることからDErkBと命名した。
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