研究概要 |
申請者はこれまでに、ラットの脳のキナーゼIIのαおよびβcDNAをプローブとしてショウジョウバエの頭部cDNAライブラリーをスクリーニングし、得られたクローンの全塩基配列を決定した結果、4種類類のキナーゼIIcDNAが存在することを明かにした。4種類のcDNAはそれぞれ530,516,509および490アミノ酸(a.a.)をコードし、単一の遺伝子からスプライシングの違いによって生じる。これらの分子は、カルモデュリン結合部位のC末端側にアミノ酸の欠失あるいは挿入がある以外は同一であり、ラットのキナーゼIIと非常に高い相同性を示し、触媒部位、調節部位、および会合部位の3つのドメインから構成されている。 そこで、本年度は、発達過程における4種類のcDNAの発現をRT-PCR法により調べた結果、新たに第5のcDNAが存在することが明かとなった。このcDNAは511a.a.をコードし、やはりスプライシングの違いによって生じ、530a.a.のアイソフォームからエキソン11が失われたものと同じ構造であった。このcDNAは発達過程においては、未受精卵、初期胚および卵巣に特異的に発現することから、第5のアイソフォームは母体由来の転写産物であることが明かとなった。このことは母体由来のキナーゼIIがショウジョウバエの胚発達に何らかの機能を持つことを示唆するものである。 今後はキナーゼII遺伝子の発現様式や転写調節機構を明かにするとともに、キナーゼIIの種々の変異体を分離同定すること、およびドミナントネガティブ法を併用することによって、高次機能におけるキナーゼIIの役割を明らかにしたいと考えている。
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